2017年6月8日木曜日

歳をとると何で時が速く流れるのか?

今年も早いもので、もう6月。歳をとると、どんどん時の流れが速くなっていく。どうにかならないものか。時の流れを食い止める方法を考えてみた。
 
1)記憶力の衰え
歳をとると、物忘れが激しくなる。直近の記憶が抜け落ちてくる。昨日食べた昼飯のおかずが思い出せない。古いことは憶えている。正月 の出来事が夏休みの記憶より鮮明だ。古いことばかり覚えているので、あ~もう、1年経ってしまったのかとなるのではないか。
 
2)生きてきた時間の長さ
5歳の子供にとっての1年間と40歳の大人の1年間では、1年間の長さの感じ方は8 倍の違いがある。100メートル歩いた後の10メートルと1000メートル歩いた後の10メートルでは、後者のほうが短く感じるだろう。これと同じこ とが時間でも言えるのではないか。生きた時間が長くなるほど、時間が速く進む。100歳くらいになったら1日はあっという間だろうな。
 
3)反応の衰え
子どものときは、速く走れたし反応も速かった。歳をとると仕事のスピー ドや何かを判断するまでに時間がかかるようになる。時の流れは一定なので、物事を認識する反応が遅くなれば、相対的に時間が速く感じる。 川の流れにそって歩いているとき、歩くスピードが速いときは、川の流れが遅く感じるが、疲れてきて歩くのが遅くなると、川の流れが速く感じるのと同じことではないか。
 
4)生理的な変化
動物が一生涯に打つ鼓動の数は大体同じだと言われている。ねずみのような小動物は鼓 動が速く時の流れを遅く感じ、象のような大型動物は速く感じるらしい。子どもの鼓動は大人より確かに速い。小さい子供の胸に手をあてて鼓動を調べると、猛烈 な勢いで打っていることがわかる。このことからも、大人になると時を速く感じるのは必然のように思える。
 
5)好奇心の衰え
子どもは好奇心でいっぱいだ。何でも不思議でたまらない。家中の電気製品のボタンを押 しまくったり、ティッシュペーパーを部屋中にばらまいたり、とにかく何にでも興味を持って触りたがる。見るもの、聞くもの、みんな始めてというのだから、 それは面白いだろう。毎日、海外旅行に行って異文化に触れているようなものだ。大人になると、始めてのことがだんだん少なくなる。その結果、退屈になって 感動もなくなりドンドン時が過ぎていく。
 
6)時を意識しなくなる
時計の針をみているとなかなか、時間が進まないものだ。1分が随分長く感じられる。 子どもの頃は誕生日のお祝いやクリスマス、お正月、入学などの楽しいイベントがたくさんある。そのときが来るまで今か今かと待っている。それは、時計の文字 盤を凝視している行為に近いのではないか。大人になると、誕生日が楽しいものではなくなってくる。
 
これらの考察から、歳をとると時の流れが速くなるのは、心理的な要因と身体的な変化に関係していることがわかる。体力の衰えは自然の摂理なので、それに逆らうことはできない。それでは、どうすれば時の刻みを遅らせることができるのか。
 
実は、自分が経験したことで時の進み方が遅くなったと感じたことがある。それは、結婚してからの何年 かだった。新しい生活が始まり、子供が生まれ、お宮参り、お節句などと忙しかった。ちょうどその頃、親父が亡くなり、初七日、四十九日の法要などいろんな イベントが重なった。始めてのことばかりで戸惑いもあったが、どうにか切り抜けた。しかし、この何年間は、確かに時間が進むのが遅かった。
 
このように、時の進み方はその時にどんな過ごし方をしたかに関わってくるのではないかと思う。新しい 体験をしているうちは、時の進みは遅く感じる。気持ちを子供に戻すということが必要だ。好奇心を持って、新しいことにチャレンジすること、毎日の単調な生 活に安住しないこと、節目節目にちゃんと楽しい行事をやることなどが時の流れのスピードを抑制することではないだろうか。

昔の人は、正月には初詣、2月に は節分、3月は桃の節句・・・など節目には忘れずに小さな年中行事をやっていた。お萩やお稲荷さんを作ったりしてみんなで、ささやかに楽しんだ。これは、 生活にメリハリをつけて時の流れをくいとめる、昔の人が考えた一つの方策だったのではないだろうか。
 
「時計が止まるとき、時間は生き返る」というフォークナーの有名な言葉がある。
時は万人に平等に与えられ、黙って通り過ぎていく。時計が刻む時の中に物語はない。時間の中に物語を作っていくのは人間にしかできない。

今という瞬間を大切に生きるということが、時の流れを抑制する最良の特効薬と言えるのではないだろうか。