2007年3月24日土曜日

まよいの森

まよいの森

平成19年3月21日
廣瀬あかね(平成九年11月10日生まれ)

ここは、ピンクの森です。きれいな花がさいて小鳥たちが楽しそうに歌う一年中春のような森です。

この森に、ハーナントという少女がいました。お父さんはシークレット、お母さんのハンナと言いました。ハーナントは呼びにくいのでハーナと呼ばれていました。

ハーナは、小学校にあがったばかりのかわいい女の子です。でも両親には言えない悩みがありました。家では、「楽しい、楽しい」と無理に笑顔をふるまうのでしたが・・・

学校に行くと、友だちがハーナの方からはなれていくのです。

「遊ぼう」とか「いっしょに行こう」とか言っても、みんな、どんどん遠ざかって行ってしまうのです。ハーナにとって、それが、とてもつらいことでした。

そんな毎日をすごしているうちに、ハーナはだんだん、「みんなのいないところに行きたい」と思うようになりました。そして、ないしょで旅に出ることにしました。ハーナは手紙を残していきました。

リュックサックに食料と薬、あとは、紙切れ一枚とペンを一本入れました。ハーナは、みんなが、まだ寝ている朝の早い時間に家を出ることにしました。行き先 は、迷いの森。そこは、一度迷いこんだら、大人でも出てくることができないと言われている危険な森です。ハーナは、怖くなりましたが、決心は変わりません でした。

「少し、悲しいな」

ハーナのホッペになみだが落ちました。

迷いの森はピンクの森の近くにありました。森に入ると、木がグニャグニャにのびていて、すごく暗いのです。ハーナは、心細くなりました。

「なんだか、怖いわぁ」と言うと

「大丈夫だよ!」という明るい女の子の声が聞こえてきました。
ハーナはびっくりして

「だれ!」と言いました。
すると、

「私は、スマイルって言うの」という声が返ってきました。

「あなたは、だあれ?」
「わ、わたしは、ハ、ハーナよ」とオドオドして言いました。

「こんな所で、何をしているの?」と、不思議そうに聞きました。

ハーナは、小さな声で言いました。
「だれも、いない所に行きたくて・・・」

「何で〜?」と聞き返してきました。ハーナの声は、もっと小さくなりました。

「みんなから、きらわれているから・・・」そう言うとハーナは泣いてしまいました。
「よかったら、私の家に来ない?」
ハーナは、大きくうなずきました。

「何で、そんなに泣いているの?寂しいことや悲しいことがあったの?」
「ヒック、うん・・・」ハーナは、泣きながら答えました。

「そのわけを教えてよ。いっしょにかいけつしてやるよ」ハーナの顔をのぞいて言いました。
ハーナは勇気を出してうちあけました。

「あのね。学校でね。友だちに遊ぼうよ、とか、いっしょに行こうよ、とか言っても、だれも私と遊んでくれないの・・・グスン」また、涙が出てきました。

「なあんだ。そんなことだったの!そんなときは、泣いたり急いだりしないで話すときに、にっこり笑ったり、やさしく見つめたりすると良いかもよ」

その言葉を聞いて、ハーナは、はっとしました。今まで、そんなことをやったことも考えたこともありませんでした。そんなかんたんなことならできるかもと元気がわいてきました。

そう思うと、こんなところで、グズグズしてはいられないな。早く、ピンクの森に帰って友だちに会いたい、と思いました。

「スマイル、ありがとう。わたし、もう行かなきゃ。この紙にペンでピンクの森へ帰る地図を書いてくれる?」と、えがおで、たのみました。

「はい、はい」と言って、スマイルは地図を書いてくれました。

地図には、スマイルからのアドバイスが書いてありました。

・いつも、えがおでがんばって!
・ファインの家と、マインドの家によった方が良いかも!

ハーナは、はじめに地図に書いてあった、ファインの家に行きました。

「こんにちは」

ハーナは、スマイルに言われたことをくり返してひとりごとを言いました。
「一番、大切なものはえがおなのね!」すると、

「いや、それはちがう!」という男の子の声が聞こえてきました。ハーナは、おどろいて、後ろへ、ひっくりかえってしまいました。

「そんなに、びっくりするなよ。はじめまして、ファインです」
ハーナは、ほっとして
「わたしは、ハーナントです。ハーナと呼んでね!」と自己しょう介をしました。

「なんで、こんなところに来たの?」スマイルと同じ質問をしました。

「友だちに、きらわれて、にげてきたの。でも、きらわれているわけがわかったんで、帰ろうと思っているところよ」

「そうなんだ」

「さっき、わたしが、えがおが一番なのね、と言ったときに、ちがう、と言ったのは何で?」
「えがおだけじゃ、足りないからだよ」ファインがさわやかな声で言いました。

ファインは、どこかへ行くと、着がえてすぐにもどってきました。ハーナは、そのすがたに、おもわず、うっとりしてしまいました。

「足りないことは、元気だよ!今、おれがきがえてきたみたいに元気な服そうで・・・ん、まあ、ハーナは元気のある服そうだけどな」

「それから?」
「なるべく、おちついて元気な声で話す。まあ、えがおもいるけど、元気が、きほんだ!」

でも、良く見るとファインの体は、すりきずだらけでした。

「あっ、血が出ているよ」ハーナが言いました。
「どうしたの?」

「げんきすぎて、木のえだでけがしちゃったんだ」

「私の薬をつけて!」

ハーナは、リュックサックから薬をだして、ファインのうでにぬってあげました。すると、すぐに血が止まりました。

「ありがとう。でも、もう行った方が・・・あっ!さよなら!」
「さよなら」

ハーナは、ファインの家から出ると走り出しました。
「早く帰って、元気でえがおの私を見せてあげよう」

すると、空から声が聞こえてきました。
「ちょっと待った。大切なことをわすれているよ」

シューというので上を見ると、女の子が雲に乗っていました。

「私の名前は、マインド。この雲で私の家へつれていってあげるわ」
「は、はい」ハーナは雲にのりました。

ひゅ〜、あっという間にマインドの家に着きました。

「あなたには、あともうひとつ、足りないものがあるわ。私が、あなたに何をつたえようとしているか考えてみて」

「う〜ん、むつかしいな。ヒントは?」
「私のなまえよ」

「わかった!気持ちが大切だということを伝えようとしているのね」
「正かい!私のように、気持ちをこめて言うのよ。がんばって!」

マインドは、雲からおりて言いました。

「この雲あげる。乗って行って」
「うん、ありがとう。さよなら」

「バイバイ」
二人は、わかれました。

ハーナは雲にのって家に帰ると、お父さんが泣きながら、だきついてきました。
「さがしたんだぞ」
お母さんもないていました。

「手紙、読まなかったの?」
テーブルの下にハーナが書いた手紙が落ちていました。
「この手紙に、旅に出ますって書いておいたのよ!」

「出かけるときは、ちゃんと言わなきゃ」
「わかりました。あっ、もう、学校に行く時間だ。いってきま〜す」

ハーナは、わくわくして学校に向かいました。

「みんな〜、おっはよ〜」

ハーナは、元気に教室に入って行きました。

もう、今までのハーナとは違います。
えがおで、元気に、気持ちをこめて言いました。

「友だちになって!おねがい」
すると、一人の子が言い出しました。

「ハーナと遊ぼうよ」
みんなも言いました。

「いっしょに、そとで遊ぼうよ」
と、ハーナをさそってくれました。

それから、ハーナは、みんなと、楽しく学んだり遊んだりしました。

【あとがき】

このお話、おもしろかったですか?これは、わたしがようち園の時、友だちがいなくて、どうしようと考えたことをぼうけんの話にしたものです。このようなこ とは、わたしたちにとって、すごく大切なことではないでしょうか。みなさんにも、わかってもらいたくて、この話をつくりました。この他にも「リップのぼう けん」「ピンクの森」などがあります。では、みなさん、お元気で。

「グッド・ナイト・アンド・ハブ・ア・ナイス・デイ」・・・あかね